2012年08月08日

山の頂きへ


山の麓から頂上まで車で登ると、
頂上にぽつんと、小さな展望台がある。

入り口を見上げると、
軽やかに動く白いカーテンが
手招きするように、ゆっくりたなびいている。
石の階段をのぼり、扉を引き、カーテンを手で分け、
部屋の中いっぱいにひろがっているのは、小さなスキー場だ。

晴れた日の雪山のように、
きらきらと光って息をのむほどまぶしい、
白銀の小さな世界。

外は脳がしびれるように暑い。
しびれた脳でただぼんやりと、スキー場を凝視していると、
リフトが動いているのに気づいた。

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気づくのに時間がかかったわけは、
動いているのに、ほとんど音がしていないからだ。
耳をこらすと、ほんの微音のモーター音が聞こえるけど
虫と鳥が出す夏の声の方がずっと優勢で、
だから、スキー場は、
今、目の前にあるのに、
見ているのに、幻みたい。

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それは
夜行で東京を発ち、
気持ちが追いつかないまま
いつの間にか雪山に降り立った時の感じに少し似ていた。
ここはスキー場で、私はずっとこの時をたのしみにしてきた、と
自分を納得させる感じに。
寝不足が過ぎると、帰るまで幻のまま過ぎてしまい、
正気に戻ったときにはすでに帰りの夜行の中で、
東京に戻り、過ぎ去った幸せな体の記憶の中から、
雪山の光や、温度や、音を思い出す。

見ている時間はわずかでも、
記憶の時間は永遠。
思い出すことができる限り、スキー場はどこにでも現れる。

麓に降りてから、
何度も山を見上げて思い出した。
そして山が見えないところでも、何度も。

山の頂きには雪山があり、
音もなく、リフトが動いている。

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「山の頂きへ」/滝沢達史
 

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2012年05月24日

金沢の庭の丸

 
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金沢の武家屋敷「野村家」の池の石はまんまるだった。
縁の下まで水が来ていて、お屋敷が水に浮かんでいるみたいな不思議な作り。
小堀遠州のお庭、でした。

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加賀藩二千万石 野村家武家屋敷跡
http://www.nomurake.com/

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2011年11月10日

記憶として、残像として



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岡野屋旅館は、勝山を流れる旭川の川端にあって
開業は江戸にさかのぼる。
4年前突然に営業を中止してそのままになっていたその岡野屋を
地元の方々やアーティストが中心となって
再び、あかりを灯した「岡野屋旅館プロジェクト」
事務局の高本敦基さんとは、去年の仕事で知りあいになった。

でも勝山は遠いし、
自分が本当に岡野屋に来ることになるなんて
そのときは想像もしなかった。


現在岡山在住の滝沢達史さんが迎えてくれ、
羽田からご一緒した小川敦生さんと共に岡野屋に到着したのは、夕方。

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晩秋の夕は暮れるのが早くて、
私が短い散歩から戻ったときには手元が見えづらいほど暗く、
ふたりは電球を灯した座敷に座って
背中合わせに展示の準備をすすめていた。
なにかをつぶやいたり、首を傾げたりしながら
ゆっくりと自分自身を岡野屋にしみ込ませ、
居場所を整えているように見えた。

時々ふっと透明になって、
壁を抜けたり、川から流れて来たり、上から照らしたりしながら。




小川さんの展示場所は、
一階の隅にある、昼なお暗い茶室。

一筆書きの複雑な模様が
障子紙に白いボールペンで描かれ、
小さな窓にはめ込まれている。
窓の下には、大きな石鹸に彫られたあかりの作品。

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展示準備が完了した夜9時前、
あかりの方は照明を落とし、
ほの暗い外光だけが差す茶室に入った。

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障子紙は淡い光を吸収し
描かれた白い線は地よりも一段階、暗い。

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じっと見た後目をつぶってみると、残像がはっきりと見えた。
また目を開く。
闇から闇に出入りしているみたいだ。


明日の朝、
描かれた影はどんな姿になっているのだろう。
雨の日には、夕焼けの夕べには、どんな色になるのだろう。




一階の客間は外廊下が巡っている。
廊下越しの窓からみえる川の中州に
巨大なプリン型の石積みがある。

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滝沢さんが地元の高校生と一緒に川の石を集めて積んだもの。

外廊下に面した窓からそれを見て室内に目を戻すと、
部屋の真ん中に、精緻な油絵がある。

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部屋から見える、外の景色と同じ、
絵の中の空は晴れていて、信号は青。

絵と窓の外が違うのは、
絵の方は、石積みの上に立っているおおきな「モノ」がいることだ。
実際の景色の方に「モノ」はいない。
それ以外の景色があまりにそのままだから、
見続ければ「モノ」のことを考えないわけにはいかなくなってくる。


「モノ」は今は失われてしまっているのだろうか。
いや、これから作られるものなのか、
作られるのではなくて、やってくるものなのか....

窓の外の風景に脳内で「モノ」を立ててみる。
かなり大きい。
埴輪とか、こけしに似ているけど、なにものだかわからない。

「モノ」とはそういうものだ。

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再び部屋に目を戻すと、
油絵の後ろには、各地の土産物がある。
岡野屋のどこかから、滝沢さんが探して来たモノたちだ。
スペインのものもあるし、なまはげもある。
部屋の中に世界中から集まって来て、
宙にとどまっている、記憶の形。

土産物は並べられているから見える。
滝沢さんと高校生が積んだ石積みは見える。
石積みの上の「モノ」は、見えない。


見えないけど、結構考えたから、
私の記憶には「モノ」の痕跡が残っている。

目を閉じてもたしかに見えた、線の影と同じように。



Living in Arts Project
http://livinginartsproject.com/index.html


小川敦生
http://www.turqoiserosco.com/atsuo_ogawa.html

滝沢達史
岡野屋旅館のこと
http://yamamoji.sblo.jp/article/49864023.html

岡野屋旅館のこと 2(もう一つの作品についてのお話)
http://yamamoji.sblo.jp/article/50060711.html

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2011年11月09日

勝山の暖簾


10月の終わりに、
岡山県の真庭市勝山という街に行ってきた。

勝山は、
山陰と山陽を結ぶ主要な街道だった出雲街道にある
白壁や土蔵、格子窓の商家が並ぶ静かな宿場町。

若いアーティストやものづくりをする方々の工房やお店になっている
古民家や商店もある。
街の暮らしを慈しむ空気が、
言葉を交わしあう人の声が、あたたかくて心地よい。

軒先には美しい暖簾(のれん)がかかっている。
この暖簾は、勝山の染色家で、
街の中にある文化施設「勝山文化往来館ひしお」の館長
加納容子さんの工房の作品。
一軒一軒と丁寧に相談して作るんだって、と教えてもらった。

住む人の歴史を語って翻る暖簾の、誇り高さよ...

90軒以上あるそうですが、全部は撮って回れなかった。
でも、いくつかをおすそわけ。

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現在はタバコは扱っていないそうですが、
お店の入り口右側にタバコ屋さんの窓口の名残。
この鳥はPeaceのあの子ですよね。

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きゃー。

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美しさに見ほれる青。

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ポストンの帽子に並ぶ郵便番号は、もちろん勝山のもの。



直島の本村の家プロジェクトの軒先にかかっているのは
実は、加納さんの暖簾なのです。

家プロジェクト
 

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2011年09月15日

虫喰いのノイズ

 
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かみそりの穴みたいな模様。
センスいいな、虫。

かすみがうら市の梨園にて。

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2011年08月26日

横浜キリンパーク

 
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前方、アカシロキリンの群れが。
於・マリンタワー
 
 
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2011年08月25日

船が描かれた地図


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横浜山手のブラフ邸の壁に飾られていた地図。

左下の文字を読んでみます。

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今般自ラ市中ヲ細見シ 方住道舗町名ノ改正区分ノ境界 外国館ノ番号 其他トモ五分一丁ノ積リヲ以テ 委シク図中に縮シ以テ 懐実ニ便ナラシム 然シ乍若シ相違ノ兼アラハ 御報知是祈早速相改差上奉リ度候

明治十年十月二十七日版権免許 同十一月出版

図画出版社
横浜野毛町三丁目二百二十一番地 平民
錦誠堂尾崎冨五郎


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古地図好きでない方でも、描かれた船のかわいさは悶絶保証中。


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2011年08月12日

屋久島の灯台

 
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明治30年にできた灯台だそうです。

教会みたい。

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ちょっと離れただけで、懐かしい。
 
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2009年09月18日

ござとコーラ

 
 
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コーラの瓶もござも
なかなか懐が深いわ。
 
 
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2009年07月31日

神さまお願い!

 
 
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オリンピックの件はちょっと...
 
 
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2009年06月28日

空とビルとコンクリートのチェック

 

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小降りになってきたので
屋上のアンテナが
像を結び始めた。
 
 
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2009年06月22日

ワニの行進

 
 
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黒い画用紙のワニが床を行進。
このあとワニたちは幼稚園の子どもたちに色を塗ってもらいます。

蔵前 アノニマ・スタジオさん
『がおがおぶー!』の読み聞かせにての一コマです。

この黒画用紙の動物クラフトは
語り手こがようこさんのオリジナル。
かわいくて、おしゃれ!
ワニのほか、ゾウ、カバ、も行進しました。

でも子どもの一番人気は、ワニ。
ワニ、かっこいいもんねー。
 

こがようこさんサイト
Summer Santa Claus 
http://www.summersantaclaus.jp/
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2009年05月30日

漂流物

 
 
七里ケ浜にてビーチコーミング。


なんでしょう、これ。
拾って帰らない方がいいような気がしたので
おいてきちゃったのですが。


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遠くに江ノ島。
夏前の七里ケ浜はのんびりです。
 
 
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2009年05月16日

sonbe cafeのフォー

 
 
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米麺もスープも、声をひそめているような
静かなフォーです。


赤とうがらしと
パクチーと
ヌクマムが
別についてくるので
途中から参加していただき
にぎやかな味にして楽しみます。
 
 

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2009年05月09日

箱根旧道の石畳

 
 
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箱根の甘酒茶屋の裏手の旧道。
歩くと足の裏に、でこぼこした感じと
石の丸さを感じます。

京都まで、あと12日くらい、かな。
 

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2009年04月28日

白影


3月の終わりに、森岡書店で、
片岡雪子さんと小川敦生さんの展示があった。

茅場町の森岡書店は古い建物の三階にある。
道路から石の階段を数段のぼり、古くて重い扉を開け
さらに石の階段を上って、
事務所のような扉を開ける。

書店に入って右側が展示スペースなのですが

でも作品が見つからない。
壁しかない。

そんなわけはないので、よくみると
段差のくぼみに黒い立方体があった。

立方体の横には、蛇腹が伸びる。
ただただ黒いキューブと蛇腹。
蛇腹は長い。


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蛇腹を見るふりをして壁を見る。
でこぼこと何度も塗り直されていて補修の跡もある。
補修の跡は色が違う。
何かの配管も。


しばし、壁を拝見し、
天井に目を上げようとして、
壁にかけてある黒く塗りつぶされたキャンバスが目に入った。
ただただ、黒いキャンバス。
 


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それらが、片岡雪子さんの作品だった。

 映画や美術展や演奏会のフライヤー、
 いろんな紙を固めて、
 黒く塗り込めたものです。

 キャンバスの方も、
 ひたすら何度も何度もいろんなものを塗り込めて、
 いろんないろんなものがしみ込ませてあるんです。



見落とした作品があるはずなので
展示スペースをもう一度見回す。

部屋の隅っこに
シュレッダーにかけられたような長く細い紙が
くしゃっとまとまっている。
これも?
片岡さんの目がうなずく。


しかし、小川さんの作品は全く見つからない。
配管が作品、じゃないだろう。
床にも、天井にも、なにも書いてない。


困って、
すみません小川さんの作品は...
と伺ったら、
入り口を入ってすぐのキャビネットのところ
パラフィン紙にくるまれたものが三つ並んでいるのを教えてくれた。

片岡さんがパラフィン紙の包みを解くと、
唐草みたいな渦模様が掘られた
固そうな白い石のようなものが出てきた。


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この模様は小川さんの模様だ。
模様が石を浸食している。

 小さい頃拾った貝殻なんだって、聞きました。
 でもこんなに包まれていたら見えないですよね。


包まれている上に、
作品じゃないようなふりをしています。
見落としてほしいのかも知れない、と思うくらい。


 昆虫採集のような気分で探してみて下さい。

 まだありますよ、小川さんの作品。

壁に見つけました。
和紙で挟まれていっしょに漉かれたような作品が
壁と同じような色で息をひそめている。


作品は、不思議な軽やかさでそこにあった。

片岡さんはときどき手に取って
たらたら、と蛇腹を広げる。


たくさんの人の手や
息づかいをしみ込ませながら
静かに時間を重ねてきた場所の精霊のように

作品たちは
その場所で
その時間を生きている


こんな風に言葉にしたら
すがたを変えてしまうような
少し後には片付けられて去ってしまう
ささやかな存在。


それを今ここに私がいて、見ている
このことを
覚えていたいな、と
思いながら見ていました。


片岡雪子 小川敦生 展 【 白 影 】
期日 3月30日(月)から4月4日(土)
於 森岡書店(東京都中央区日本橋茅場町)
http://www.moriokashoten.com/

 お二人のご好意で、
 作品を撮影させていただきました。
 稚拙な写真ですが、
 森岡書店さんの空気と
 お二人の作品の味わいをおすそわけできたらうれしいです。

 http://gallery.me.com/studiopanda#100002
 
 
 

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2009年04月18日

ゲシュタルト崩壊前夜

 
 
kasanado.jpg
 
 
各文字、マグネットなんです。
「な」はマグネット2つ
「ど」は3つ使います。 


ぜんぶばらばらにしたら
もとの文章にもどせるだろうか。
 

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2009年04月16日

お菓子で旅をする

 
 
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エジプトのクリスタルと
海辺の太陽のかけら

眼が旅に出ちゃうお菓子を
いただきました。
 
 

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2009年04月01日

夜の桃

 
 
ひとクラス全員花魁!


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2009年03月31日

時間がしみ込んでいる

 
 
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小学生の頃、
教室の古い椅子の座面が
素足に触れるのが苦手で
こっそりハンカチを敷いて座ってたんです。

椅子のしみが恐ろしかったから。

今もちょっと怖い。
でも気になってしかたない。


椅子@茅場町 森岡書店

時間がしみ込んだ木の板
昔拾った固い貝殻
他にも、いろいろ
大切な作品が展示されていました。

 
 



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